「薄めた血液」が
体に好影響をもたらす
老いたマウスの血液を詳細に解析すると、血漿交換によって年齢とともに上昇する炎症性タンパク質の濃度が減少すると同時に、組織の維持と修復を広く調整し、免疫反応を促進するいくつかのタンパク質のレベルが上昇していることが判明しました。
この「薄めた血液」アプローチは、体内のバランスを整え、全体の健康を促進する新たな戦略として注目されています。
研究チームは現在、ヒトでの血漿交換の改良に取り組み、筋肉の衰え、神経変性、2型糖尿病、免疫異常など、加齢に伴う疾患の治療の臨床試験を進めています。
その後、アメリカ・スタンフォード大学の研究チームによる研究で、運動するマウスの血液が運動しないマウスの脳によい影響を及ぼすことが明らかになりました。具体的には、運動したマウスの血液を運動しないマウスに輸血すると、脳の炎症が抑制され、認知能力が向上する結果が確認されたのです。
研究者は、運動するマウスの血液中に含まれる何らかのタンパク質が重要な役割を果たしていると予想しました。事実、運動するマウスと運動しないマウスの血液を比較したところ、特に「クラステリン」というタンパク質のレベルが運動したマウスの血液中では著しく高いことが判明しました。しかもこのタンパク質が抗炎症作用を持つことが示されたのです。
毎日の軽い運動で
認知能力が向上
さらに、人間の有酸素運動も血中のクラステリンレベルを上昇させるため、認知障害のある患者が6カ月間定期的に運動を行った結果、クラステリン濃度の向上とともに脳の炎症が軽減されたという報告もあります。
この研究は、運動が特定の抗炎症成分――クラステリン――を血液中に増加させ、脳機能を改善する効果を裏づけています。
これらの研究成果は、単に若さを取り戻す手段にとどまらず、「くじけない脳」を育むための新たな視点を提供しています。