「歳を重ねると、新しいことが覚えられない……」そんな考えに囚われている中高年も多いだろう。しかし、最新の脳科学研究で“脳は年齢とともに成熟する”という事実が判明したという。ただし、成熟した脳を使うにはコツが必要となる。本稿は、加藤俊徳『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)の一部を抜粋・編集したものです。
中年の脳は
高いポテンシャルを秘めている!
学生時代、あまり勉強をしてこなかった、勉強が得意でなかった、勉強がちっとも面白くなかった、という思い出がありますか?
もしくは「学生時代に勉強をサボったことを深く後悔している。今だったら大学の授業、しっかり聞くのに……。どうしてあのとき真面目に授業を受けなかったのだろう」と、大人になってから、学びたい欲が湧いてきたという人も少なくないはず。
実は、これ、脳科学的に当たり前の現象なのです。
私は、かねてから脳の成人式は30歳と言ってきました。
脳が構造上、「大人になった」という状態になるのは30歳頃だからです。
もちろん個人差はありますが、学生時代の脳と30代からの脳とでは、脳の働き方が変わります。
脳のことをよく知らないと、若いとき、つまり20代くらいまでの脳のほうが、イキイキしていて、脳としてもよく働き、だから物覚えもよかったんだと思ってしまいますよね。
しかし、これは間違い。
脳の働きから言えば、大人になってからのほうが断然よく働きますし、記憶力、判断力、決断力など、あらゆる面から見ても、“学生脳”より“大人脳”のほうがレベルが上。
大前提として脳科学的には、20代までの学生脳は、器官として未熟で未発達。
脳が持っている本来の力をちっとも発揮できない状態だったのです。
脳力を体力にたとえてみましょう。
子どものときと今を比べて、どちらが体力があったでしょうか?
子どものときですよね。
私自身、学生時代は運動に打ち込んだのですが、学生時代のほうが圧倒的に体力がありました。どんなに動いても疲れにくいし、ちょっと休んだだけで回復できる身体を持っていました。
しかし、たしかに体力はありましたが、できることは限られていなかったでしょうか。
体力が有り余る5歳児も、時速100㎞の球を投げることはできません。
陸上でもテニスでも野球でもサッカーでも、プロアスリートは体力があった高校時代よりも、大人になってから全盛期を迎えます。
自分史上一番の記録が生まれるのは、体力があった若い頃よりも、大人になってからです。
脳力も体力と全く一緒。
若いときのほうが、たしかに元気だったかもしれませんが、本当の脳力を発できるのは、大人になってから。
頭がよくなるチャンスは、大人になってからのほうが多いのです。
脳が成人を迎える30歳を境に、脳の機能はどんどん成長していくため、本来の脳の力を発揮できるようになります。