これらの物語は、死や永遠の命、そして恐怖という普遍的なテーマと結びつき、文化や時代を超えて人々の間に畏怖と憧れなどの象徴として伝えられてきました。
しかし、実際に「若い生き血を吸うことで生きながらえる」という現象が存在するのでしょうか?
こうした伝説は、社会の不安や死への恐怖を象徴的に表現するための物語として生まれ、時代ごとの価値観や文化背景を反映していると指摘されていますが…。
2005年、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、年齢が異なる2匹のマウスの血管をつなぎ、互いの血液が互いの体を自由に行き来できる状態をつくる実験をしました。その結果、老齢マウスの組織に若返りの兆候が現れるという驚くべき成果が報告されました。
この発見をきっかけとして、多くの研究者が「若い血液には若返り効果をもたらす特別なタンパク質や分子が含まれているのではないか」と考え、時には若い血液の売買といった過激な動きにまでつながりました。
しかし、2016年の実験では、若いマウスに老齢のマウスの血液を輸血すると老化の兆候が見られるものの、老齢マウスに若いマウスの血液を輸血しても若返りの効果は得られないという結果が報告されました。真の若返り効果は「若い血液」ではなく、「古い血液の負荷」を軽減することにあるのではないかとの新たな見解が示されたわけです。
若返りを生む
血液の特徴とは?
2020年、同研究グループは老齢マウスの血漿の半分を生理食塩水とアルブミン(アルブミンは血漿中のタンパク質を補うもの)の混合液(すなわちニュートラルな血液)で置き換える検証を行いました。要するに、血液そのものを「薄める」ことで、老化に伴い増加する炎症性タンパク質の濃度を低下させ、体内のバランスを整える効果が期待されたのです。
その結果、老齢マウスでは筋肉修復の促進、肝臓の脂肪蓄積と線維化の抑制、さらに海馬の神経新生の増加という明確な若返り効果が確認されました。