陥没した道路写真はイメージです Photo:PIXTA

いまだ記憶に新しい、今年1月に起きた埼玉県八潮市の道路陥没事故。転落したトラックの荷台と運転台は分断され、運転手が遺体で発見されるまで3カ月も要した。すべての始まりは下水道管の破損だった。なぜ事態はここまで拡大したのか?完全復旧まで5~7年を要するとされる事故の全容と、日本中の地下に潜むリスクを水ジャーナリストの著者が解説する。※本稿は、橋本淳司『あなたの街の上下水道が危ない!』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

道路陥没の穴は直径40メートル
深さ15メートルまで拡大

 いつもと変わらぬ風景に、まるで異世界へと繋がる穴が開いたようでした。

 2025年1月28日午前10時頃、埼玉県八潮市の交差点で道路が突然陥没しました。穴の大きさは直径およそ10メートル、深さ約5メートル。通行中だったトラックがそのまま落下し、運転していた男性(74歳)の行方がわからなくなりました。

 メディアはこの事故をいかに収拾させるかを報じましたが、事態はさらに悪化しました。

 翌日、現場に投入された重機が地盤に荷重をかけたことで、周囲の地面が再び崩落。調査や救出のために手を加えるたびに、地中の構造は脆さをあらわにし、穴はじわじわと広がっていきました。崩落は断続的に続き、わずか1週間のうちに穴の大きさは直径40メートル、深さ15メートルに達します。

 一度の崩落ではなく、時間をかけてじわじわと被害が拡大していく――この事実は、周辺住民に恐怖を与えました。

 事故の第一報が消防に入ったのは、1月28日午前9時49分という記録が残っています。「道路が陥没し、トラックが落下した」との通報を受け、現場を管轄する草加八潮消防局が救助活動に着手しました。