もちろん、現場の隊員たちは限られた情報のもとで最大限の努力を続けていました。

下水道管の破損から
道路陥没に至るプロセス

 事故の原因とみられているのは、地下約10メートルに埋設されていた下水道管の破損です。この管は、1983年に敷設された直径4.75メートルの鉄筋コンクリート製で、設計上の耐用年数は約50年とされています。事故当時、設置からおよそ42年が経過していました。

 老朽化が進んでいたことは否定できませんが、問題はそれだけではありません。

 下水道管が破損した場合、何が起こるのか。そこには、あまり知られていない現象が関係しています。

 管にひびが入ると、その隙間から周囲の土砂が少しずつ管の中に引き込まれていきます。

 とくに、下水道管は常時満水ではなく、内部に空間がある構造なので、こうした土砂の流入が起きやすくなります。土が失われた部分には空洞が生じ、時間とともにその空洞は次第に大きくなっていきます。

 下水道管の大きさは、直径25センチから8.5メートル程度に及びます。上水道管は常時水に満たされていますが、下水道管は大雨の時以外は空洞部分が大きい。つまり、地下に巨大な空間が広がっているのです。それが壊れると、いったいどうなるか想像してみてください。

 最初は、破損した下水道管の上部に、わずか数十センチ程度の空洞が生じただけだったのかもしれません。しかし、そこに少しずつ土砂が流れ込むことで、空洞はじわじわと広がっていきます。

 地盤の上には、舗装道路や交差点があり、車の通行によって長期間にわたって圧力が加わり続けることで、土の締まりが失われ、地中の空隙がますます拡大していくのです。

図表:道路陥没に至るプロセス同書より転載 拡大画像表示