たとえば、2018年の使い捨てプラスチック削減指令はプラスチックごみを減らすための政策だが、循環型経済を目指す行動計画の一部として法整備されている。

 パンデミックのときに創られた復興基金(NextGenerationEU)はロックダウンに伴う雇用減などへの支援も行ったが、気候変動対策やデジタル化など将来に向けた投資促進が重要な項目となっていた。

 ルクセンブルクの産業育成も補助金やスタートアップ企業の支援にとどまらず、金融業の育成、技術・人材開発、国際協力、気候変動対策など幅広い視野を持って進められている。

 政策はパッケージで進められるべきであり、単に目先の問題に対応するためだけの場当たり的な対応では政策間の一貫性が保てず、日本の競争力を高めることにつながらない。

 何よりも重要なのは長期的なビジョンである。今後数十年のうちに社会はどのように発展していくと予想されるか、その中でどのような対策が必要なのか、核となるビジョンがあれば場当たり的な対応に陥らずに済む。

 本稿のように諸外国の事例を深く研究することは重要だが、それぞれの国が置かれている状況は異なるため、必要な政策も異なる。

 日本が置かれた状況を把握し、長期的なビジョンを策定することが必要で、ビジョンの効果的な実現のためには、ビジョンに対する国民の理解を深める努力が欠かせない。