
かつて「メイド・イン・ジャパン」が世界を席巻したが、いまや企業の生産性や収益率で日本はスイスに大きく後れを取っている。高額なのに売れ続けるロレックスは、まさにスイスの生産性の高さを物語る。価格競争をするのではなく、「質で勝つ」スイスの戦略に迫る。※本稿は、関山 健、鹿島平和研究所『「稼ぐ小国」の戦略 世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
なぜ小国のスイスが
日本のお手本となるのか?
日本とスイスは似ている点も多い。これは日本がスイスから学ぶべき理由の1つである。
スイスは人口約900万人で国としての人口規模は大きくないが、産業構造は思いのほか多様化している。
農業から製造業、建設業、商業、金融業、サービス業がまんべんなく存在していて、GDPを産業別に分けると、日本とスイスは似ていることがわかる。

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人口が数百万人規模の国の場合、特定産業が経済の大半を占めているケースが典型的な中、スイスは産業が多様化している。これは経済の安定にも寄与している。
たとえば産業の大半を金融業が占めていたら、金融危機が起こったとたんに国全体の経済が沈んでしまうが、産業が多様化していればリスクが分散されるからだ。スイスは経済的な安定性も備えているといってよい。