日本はこの面では有利な立場にあるといえるが、様々な国の人々を受け入れるための多言語環境の整備が進んでいない。

 また、日本では低スキル労働者を労働力不足の解消手段として考えることが多く、高スキル労働者を受け入れて活躍してもらうという議論の盛り上がりに欠けているように思える。

 日本は東京市場をアジアの金融センターとして育てようとしているが、少なくとも筆者の印象では、欧米の投資家は東京市場をアジア地域への投資窓口とはみなしていない。多くの投資家はシンガポールや香港を選ぶだろう。

 ロンドンやニューヨークなどの金融センターには、金融業の産業クラスターが形成されていること、高スキル人材が集まっていること、金融業のイノベーションを支える法整備が整えられていることなどの条件が整っている。

 暗号通貨、ブロックチェーン、ビッグデータ、AIなどはフィンテックに欠かせない要素だが、日本では、サンドボックス(新技術に対して一時的に緩いルールを適用すること)を含む適切な法整備や教育体制が整っていない。

 日本では暗号通貨は投機のための道具としてネガティブなイメージが持たれているが、暗号通貨の投資信託(上場投資信託のETFに対してETPと呼ばれている)への投資は機関投資家も行っており、暗号通貨関連ビジネスは金融のイノベーションに欠かせない要素となっている。筆者は、日本には新しい技術への拒否感があるように感じられる。

発展の鍵は“国際志向”と
“長期的なビジョン”の2つ

 ルクセンブルクの国際志向も学ぶべき点である。

 日本には内向き志向があるが、国際的な志向は単に商圏を広げるだけでなく、多様性への対応力や最新情報の入手にも役立つ。

 政策面でも学ぶべき点がある。

 EUの政策について、日本の報道では政策が個別に取り上げられるが、EUの経済政策はパッケージで進められる。