
東京・信濃町の文学座アトリエで9月9日から21日まで『野良豚(いのしし)』という公演が行われている。作者は、香港の有名な女性劇作家、荘梅岩さん。彼女は現代の香港を代表する劇作家、演出家だが、先日、9月1日にFacebookであるやりとりを公開し、中華圏で大きな話題となっている。彼女が母校やプロデューサーから受けた、驚きの“仕打ち”とは?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
「5月35日」というタブー
東京・信濃町の文学座アトリエで9月9日から、香港の著名劇作家、荘梅岩さんが2012年に香港芸術祭で発表した作品『野良豚(いのしし)』が、文学座の日本人俳優たちによって演じられている。
香港人の有名な劇作家と言われてもほとんどの日本人はピンとこないだろうが、荘さんは今の香港を代表する劇作家、演出家だ。この公演の直前の8月にも東京・吉祥寺シアターで彼女の作品が演じられたばかりだ。その演目は『5月35日』。日本では2022年に竹下景子さん、林次樹さんら主演で初演され、今回もほぼオリジナルキャストによって再演された。
それにしても、5月35日?……と、あなたは思うかもしれない。もちろん、世界中のカレンダーを見比べてもそんな日付はない。だが、「31日の翌日は1日で……」と指折り数えてみれば、それが6月4日にあたることに気づくだろう。
1989年のこの日、中国北京で天安門事件が起きた。中華圏ではその日付から「六四事件」と呼ばれるが、それが中国のネットで「禁句」にされて以来、人々は代わりに「5月35日」と呼ぶようになった。残念ながら、中国のネットではこの表現もとっくにブロックされているが。