PESTELによる社会変化の全体像

・Political(政治)

 これからの日本の政治は、国際的緊張と国内硬直の二重リスクにさらされる。

 米中対立が長期化し、日本は米国との同盟を軸にしながらも中国との経済的依存を断ち切れず、常に板ばさみとなる。台湾海峡の緊張が今以上に高まる可能性もある。

 一方、国内では世代交代が進まず、長期政権の惰性と調整型政治が続き、重要なことが決まらずに制度改革の遅れが積み重なる。

 地方自治体は人口減少と財政難で公共交通や病院など生活インフラの維持が難しくなり、自治体の基本サービスすら遂行できないリスクが現実味を帯びてくる。中央、地方ともに政権は常に不安定な状況が続き、長期的視点での業務遂行に支障が出る。

・Economic(経済)

 世界経済が分断を強める中、グローバル最適化(世界レベルでの分業体制)はますます難しくなり、国内や地域ごとの最適化が中心的な課題となる。日本のエネルギーや食料の輸入依存は変わらず、円安の継続可能性が高止まりし、人手不足によって物価はさらに高騰する。生活コストの上昇は避けられない。

 賃上げが十分であれば救いがあるが、変革期への対応のため、企業は余裕資金を確保したい思惑が強く、物価上昇に見合う給与アップが実施されるかどうかは不透明である。さらにはAIによる知識労働者の雇用喪失なども発生する。そうなると、景気への悪影響は避けられない。

・Social(社会)

 これからの社会における大きなリスク要因の一つは移民・外国人労働者の受け入れである。

 少子高齢化により、介護、建設、物流、農業といった基盤産業はすでに外国人労働者なしでは成立しない。だが、制度の枠組みは未整備で、地域社会では言語・文化・生活習慣の違いから孤立や摩擦も生じている。

 日本社会はあたかも「移民国家化」への道を歩み始めているようにも見えるが、それを公式に明確に認めることを避け続けており、反発や抵抗も根強い。今後、大方針の決定や法整備、および社会統合をどう進めるかが大きな課題となる。国論も大きく二分され分断化への道を歩む可能性もある。