最大の変化はAI+ロボティクスの衝撃
以上のように、あらゆる点でビジネスや社会の基盤が大きく揺れ動く時代に入っている。まさに混迷の時代である。
その中でも、もっとも波及効果が大きく、また企業や個人に大きな影響を与えるのは、AIとロボティクスの進化であろう。向こう5年間で、AIとロボティクスは次のように進化するのではないか。
・AIの進化
生成AIは文章生成だけでなく、動画・音声・設計図面まで扱う「マルチモーダルAI」へと深化する。さらに、日常の業務を支援するAIエージェントに加え、特定業務に最適化された専門エージェントAIも普及する。経営者や管理職の知見をもとに業務の代行をするAIクローンも徐々に職場に入り始め、意思決定の精度が高まる。
また、内部監査などもAIを利用することで飛躍的に精度が上がり、違法性のある行為も迅速に発見されるようになる。簡単に言うと、あらゆる局面でAIなしでは立ち行かない状況になる。一方で、まったくAI導入に興味を持たない企業もあり、その差は大きなものになるだろう。
・ロボティクスの進化
工場や倉庫でのロボットによる自動搬送だけでなく、物流、農業、建設、介護など「人と接する領域」での自律動作が進む。軽量化・低価格化によって、中小企業や家庭でも導入が可能になる。
一般的にロボット導入は現場の反対によって実現できないものだが、こと日本においては、現場が極度の人手不足にあることから、労使ともに導入に積極的になることが想定される。
そして、これらの延長線上には、社会構造そのもの(PESTELすべて)を大きく変えるような大変化が待ち構えている。
たとえば、Uber的な自動運転による乗合タクシーが一般化すれば、安価で必要なときに必要な移動ができるようになり、移動手段として個人がクルマを保有する必要がなくなる(そもそも、1日を通してみれば、家庭用乗用車の約95%は停止状態にあるという)。
カーシェアリングを徹底し、全体最適で運用すれば、必要なクルマの台数はけた違いに少なくて済む。そうすれば、駐車場に割くスペースも不要になる。CO2も削減され、渋滞もなくなる。新規生産台数も大幅に減る。