それゆえに、「ワシントンとシリコンバレーは友人にならなければならない」というのがボイルの主張である(注1)。

 アンドリーセン・ホロウィッツは、こうした考えに基づき、あり得る近未来の不確実な事態――想定されているのは台湾危機である――に対応する、あるいはまた、アメリカの産業の復活を牽引する50社を「アメリカン・ダイナミズム50」としてサイト上で選定している(注2)。

 この50社のなかにはたとえば、航空宇宙産業と防衛産業での産業オートメーションを目指すスタートアップ企業であるハドリアン社などが含まれている。

ゼレンスキーをなじり
忠誠心をアピールしたヴァンス

 このアメリカン・ダイナミズム・サミット2025で、政府の来賓としてスピーチをしたのが副大統領のJ・D・ヴァンスだった。

 第2次トランプ政権が発足して以降、トランプやマスクにも増して毀誉褒貶著しいのがヴァンスだろう。ウクライナのゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招いての会談で、ゼレンスキーに感謝の念が不足しているとなじったことで、あたかもトランプの番犬としてふるまうヴァンスの姿は多くの人びとの脳裏に刻まれたはずである。

 2025年2月のミュンヘン安全保障会議でのスピーチでも、挨拶に立ったヴァンスは、ヨーロッパが有してきた根本的な価値から今やヨーロッパ自身が離れていると語り、ヨーロッパが懸念すべきは外部からの脅威ではなく、内部の脅威であるとヨーロッパ各国の参加者たちに説諭した。

 上院議員から共和党の副大統領候補、そして第2次トランプ政権の副大統領にまで一気に駆け上がり、いまや2028年大統領選の有力候補として取り沙汰されるまでになったヴァンスは、白人労働者階級の自暴自棄な現状を自伝的に描き出した作品である『ヒルビリー・エレジー(Hillbilly Elegy)』(編集部注/アパラチア山脈周辺出身の白人貧困層は「ヒルビリー」と呼ばれる)の著者として日本でも知られてきた。

 ヴァンスはこの本で、バラク・オバマの正しさはアパラチアの白人にとって違和感しかもたらさないと書いたが、かつてトランプについても批判を口にしていたことがたびたび指摘されてきた。

(注1)Katherine Boyle, “Building American Dynamism,”(January 14,2022)in https://a16z.com/building-american-dynamism/
(注2)https://a16z.com/american-dynamism-50-2025