![ドナルド・トランプ大統領](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/650/img_486e34ba59943d8b979a724033e7813d446936.jpg)
トランプ大統領の登場以来、リベラル系知識人の多くは、「アメリカ社会の分断」を語る。そしてそれは、トランプに代表される保守的な思想に共鳴した者たちによって引き起こされているという。その実態を探るべく、NHK記者である筆者は、アメリカ各地を回った。彼が見た保守派の若者団体「ターニング・ポイント・USA」の集会の一幕をご紹介する。※本稿は、及川 順『引き裂かれるアメリカ トランプをめぐるZ世代の闘争』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
アメリカ青年たちが心酔する
保守派団体創設者の素顔とは
ステージ上では、ベース音が効いた音楽にあわせて鼓笛隊が展開する中、20本ほどの白いスモークが上に向かって勢いよく噴出した。そして、背景の大型スクリーンには、花火が夜空で咲き誇る様子が映し出される。お待ちかねの団体創設者、チャーリー・カーク氏が登壇した。わずか18歳の時に「ターニング・ポイント・USA」を創設し、10年余りで、全米3500の大学と1800を超える高校にメンバーがいる団体にまで成長させたカリスマだ。
この日のカーク氏は、白のワイシャツに、赤のネクタイ、黒に近い青色のダークスーツ、黒の革靴というトラディショナルなスタイルで登場した。アメリカ国旗を連想させる三色のカラー・コーディネーション、特に赤のネクタイは、保守系のアイコンだ。
カーク氏が印象的なのは、その若々しさだ。アメリカの白人としては標準的な身長に見えるが、スーツをパリッと着こなし、颯爽としている。そして、これだけ大きな組織のリーダーでありながら、彼はまだ29歳なのだ。若者にとって、カーク氏の演説を聞く時の気持ちは、自分たちの親世代、あるいは祖父母世代の政治家の演説を聞いている時とはまったく異なるはずだ。
若きカリスマは、大学生から見れば、卒業して6、7年が経ち、今は社会人として活躍している頼もしい先輩というところだろうか。高校生から見れば、滑舌良く授業を展開する爽やかで知的な雰囲気を漂わせる憧れの塾講師のような存在だろう。
若きカリスマが訴えた
「アメリカの分岐点」
団体の広報文を見ると、カーク氏の脇を固めるメンバーも、男女問わず、若さと力強さにあふれていて、これが若者を惹きつける原動力の1つになっているようだ。
「ターニング・ポイント・USA」は全米各地で集会を開いているが、今回取材している「アメリカ・フェスト」は、年間を通じて最大規模だ。つまり、ここで行われるカーク氏の演説は、団体にとって非常に重要な意味を持つ。今後1年間の活動方針を示すいわば一般教書演説のようなものだ。
カーク氏は、演説の冒頭、上映されたばかりのビデオ(編集部注/集会のオープニング映像。中国共産党の挑戦、アポロ計画、レーガンによる冷戦の勝利、ブッシュによるテロとの戦いを映し出し、最後は「今こそアメリカを守る時」のメッセージが現れた)への賛辞を述べた後、こう切り出した。
「我々は今、我々の国の歴史にとって非常に重要な時にいる。我々には、保守の運動としてのビジョンが必要だ。これからの数日間で、我々はなぜ戦っているのか、そして、なぜ、資金、エネルギー、時間をこんなにも費やしているのかを深く考えよう」