「中間管理職の悩みが消えた」
「ハラスメントに配慮して働けるようになった」
そんな感想が届いているのが、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』『パーフェクトな意思決定』シリーズ四部作だ。これまで4500社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」をもとに、ビジネスの現場で「数字に強くなれる」「仕組みで解決できる」という思考法を授ける本シリーズは、さまざまな企業・業界・個人から圧倒的な支持を集めている。この連載では、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方について指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「親身なつもり」かもよ?
「親身になってくれる上司」は、一見、理想的な存在に思えます。
しかし、部下の立場から見ると、ある種の「親身さ」がかえってプレッシャーや疲労の原因となっていることも少なくありません。
「親身なつもり」で実行されるマネジメントが、実は現場を疲弊させている。
そんな皮肉な構図について考えてみましょう。
親身すぎる「介入」は、自律を奪う
例えば、メンバーが少しでも困っていそうな様子を見せると、すぐに「どう? 困ってない?」「大丈夫? 代わろうか?」と声をかける上司がいます。
一見優しそうですが、こうした介入は、メンバーに「見張られている」「信用されていない」と感じさせることがあります。
また、「困ったときはいつでも相談して」と言いながら、実際には頻繁に口を出してくるタイプは、「相談の余地がない」と部下に思わせてしまうのです。
「共感」が過剰になるとブレる
親身なマネジメントのもう一つの罠は、「個人の感情」への過度な共感です。
「つらいよね」「わかるよ、しんどいよね」と感情に寄り添うことは悪いことではありませんが、それがすぎると「やらなくていい理由」を増幅させてしまいます。
組織に必要なのは、感情の共感ではなく、「成果につながる支援」です。
感情に共感しながらも、軸を失わずに進める姿勢が求められます。
「寄り添い型パワハラ」になっていないか?
近年では、「お前のためを思って言ってるんだ」が通じなくなりました。
しかし、その裏返しで増えているのが、「やさしさの皮をかぶった圧力」です。
たとえば、「無理しないでね」と言いながら、実際には納期が厳しいまま放置する、あるいは「任せるね」と言いながら、その判断に後から干渉する。
一見ソフトな物言いでも、実質的にはコントロールを強める言動は、「寄り添い型パワハラ」とも言える危険なマネジメントです。
親身になるとは「見守ること」である
本当に親身なマネジメントとは、メンバーの状況を把握しつつも、成長と責任の機会を与えることです。
手を出しすぎず、過剰に同情もせず、しかしいつでもフォローできる位置にいる。
そんなバランス感覚が問われます。
メンバーのためを思うなら、「やさしい言葉」よりも「信頼の距離感」を意識するべきです。
(本稿は、『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏が書き下ろしたものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業副本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出合い、2013年に独立。多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年足らずで上場を果たし、これまで9年間で約4500社に識学メソッドが導入されている。著書にシリーズ累計174万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)がある。『パーフェクトな意思決定』はシリーズ最新刊。