これは「親離れ子離れ」の物語なんです。冒頭の朝、親子げんかで、翔が「もう二度と帰ってこないから!!」と捨て台詞を吐き、お母さんも「もう二度と帰ってきてほしくないわ!!」と言い返す。あれが結末を予告しています。最初から決めていたことでした。
――翔にとって残酷な「通過儀礼」も描かれた。
少ない食料をめぐって子どもたち同士の争いが始まり、応戦した翔は相手を殺してしまいます。少年誌ではきつすぎたかもしれませんが、翔が「もう母親のいる過去へは戻れない」と決心するために、必要な場面でした。
批判を受け痛みながら描いた
「男の子もの」の代表作
子どもが殺し合うシーンは大人からかなり批判も受けました。でも、ここはこの作品の命なんです。子どもは大人と違って純真だから、そういうことは起こらないと考える方が非現実的だと思う。僕は描くべきものは描く。後は読者に判断してもらうしかないと思っています。

――大和小学校には当初、児童や先生が全部で862人いたはずだが、物語のラスト近くでは100人ほどまで減ってしまっている。
人類が未来に向かって持続するためには、最後7、8人では難しい。どこまで減らすかのギリギリの限界は考えていました。大怪虫と戦った池垣君みたいな、勇敢で前向きなパワーのある子まで死なせてしまった。彼には人気があったんです。かわいそうでしたが、これだけのことがあって誰も傷つかないのは、いくら娯楽作品でも悠長すぎると思うんです。
終盤、翔たちはみんなやつれて、目の下のクマが消えません。それを描くのも心が痛みました。僕はこの作品を、自分の「男の子もの」の代表作だと思っています。この時期にこれを描けたのは、大変幸せなことでした。
