【おとなの漫画評vol.22】
『彼方のアストラ』
全5巻 2019年3月完結
集英社
篠原健太
『十五少年漂流記』を想起させる
少年向けSF冒険物語に見えるが…
タイトルの「アストラ」はラテン語で「天」や「新星」といった意味だ。『彼方のアストラ』は、宇宙の彼方に放り出された少年少女たちが、母星に帰還しようとするSF冒険物語である。ウェブ漫画サイトの「少年ジャンプ+」で2016年5月から2017年12月まで連載され、その後、紙の単行本として全5巻にまとめられて発売された。
中編のSF漫画としてよく整理された作品だ。そのうえ、ミステリーの要素も強く、どんでん返しと謎解きの面白さもある。
登場人物は男女9人の高校生とその姉妹。彼らは惑星マクバで5日間のキャンプを体験するというイベントに参加するため、宇宙船へ乗り込んだ。
順調に惑星マクバへ到着して外に出ると、すぐに空間の裂け目のような球体に襲われ、9人とも宇宙空間へ一瞬で放り出されてしまう。宇宙服は着ていたままなので死傷者はいない。
すると、なぜか彼らの近くに無人の宇宙船が浮いていた。この宇宙船へ全員で逃げ込むことになる。