強みにどうやって気づく?

――なるほど。しかし強みは本人が気づきにくいと言われますね。どうすれば知ることができるのでしょうか?

吉田:ドラッカーは『明日を支配するもの』の中でこう述べています。

「誰でも自分の強みはわかっていると思う。たいていが間違いである。知っているのは、強みというよりも強みならざるものである。それでさえ間違いのことが多い」

強みは本人には自覚しづらいものです。なぜなら、それは自然にできてしまうこと、当たり前にやっていることだからです。他者に指摘されて初めて「それが強みだったのか」と気づくケースが多いのです。

同書の中では「強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、何を期待するかを直ちに書きとめておかなければならない。そして九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合しなければならない。私自身は、これを五〇年続けている。しかも、そのたびに驚かされている。これを行なうならば、誰もが同じように驚かされるにちがいない」

と書いています。

これを実践すれば、二、三年のうちに自らの強みが何であるかが明らかになるといいます。

一方でドラッカーは『経営者の条件』では「誰もが人については専門家になれる。本人よりもよくわかる」ともいっています。

強みはむしろ他者の目に映るもの。だからこそ、マネジャーが問いを投げかけ、本人が思い出せるようにすることが効果的です。

部下を伸ばすリーダーの質問

――どのような問いかけですか?

吉田:たとえばこんな質問です。

・「これまでどんなときに『ありがとう』と言われましたか?」
・「これまでどんなときに『すごいね』と言われましたか?」
・「チームで何かに取り組むとき、どんな役割なら他の人よりうまくやれますか?」
・「他の人には難しくても自分には簡単にやれたことは何ですか?」

これらは、本人の自覚に眠っている強みを外に引き出す問いかけです。

自分で自分の強みを評価するのではなく、第三者からの評価を「ああ、そういえばよく人からこう言われていたな……」と思い出してもらうのです。

加えて、マネジャー自身が日常的に観察することが何より大切です。

「この人はどういうときに集中しているか」「どんな場面で笑顔が出るか」「逆にどんな場面で疲弊しているか」。

強み、ワークスタイル、価値観――その人の全体像を理解しようとするまなざしが、強みを発見する一番のスタート地点になります。

――リーダーが意識的にこうした問いかけを行うことで、メンバーも自分の強みを知ることができるのですね。ありがとうございました。