
親が亡くなったあとに残されるのは、思い出だけではない。衣服や家具、写真や書類など、膨大な品々をどう扱うか。そこで注目されているのが、生前に少しずつ片づけを始める「生前整理」である。単なる片付けにとどまらず、思い出や価値を見直す機会にもなるという。予想外の発見や心の整理にもつながるこの方法の可能性を探る。※本稿は、旦木瑞穂『しなくていい介護 「引き算」と「手抜き」で乗り切る』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
「面倒臭い遺品整理」より
皆が納得する「生前整理」を
多くの子ども世代は、仕事や家庭、家事や育児など、自分のことだけでも精一杯で、親のことなどまで手が回らない。正直、「親の世話なんて面倒臭い」と考えている子ども世代は少なくないだろう。親自身も「まだ早い」「縁起でもない」と言って、「生前整理」を具体的に進めない人は多い。
しかし、“その時”は突然やってくる。実際に経験した櫻木さんもそうだった。
20年以上帰省せず、親が2人とも認知症になってしまってから実家の荷物を片付けることになった櫻木さんは、両親は存命でも、実質「遺品整理」のような作業になってしまった。
実際、“その時”が来てしまうと、本人もその家族も気持ちの余裕が無くなり、冷静な判断ができなかったり、意見の違いから揉めてトラブルに発展してしまったりするケースも珍しくない。