「しじみ汁は松江人の血液」。信頼の料理指導スタッフ

「時代が変わって明治の世になって戸惑ってそれからずっと立ち尽くしちょるの」

 主題歌はお父さんの気持ちを歌っているのかもしれない。これまで武士として堂々と誇りを持って生きてきたにもかかわらず剣術がなんにも意味を成さなくなった。髷(まげ)すら主流ではなくなった。手足をもがれ、どうしていいのかわからなくなっても無理はない。誰もが簡単に価値観を変えて生きられるわけじゃない。松野家の男たちは不器用なのだろう。

 お母さんがそう言うから子どもも父を尊敬し続けることができる。

「父上はダメじゃないよね。なんも悪くないよね。父上は悪くない」

 トキは泣きながら父を信じ続ける。

 働かない父を決して断罪しない。これはとてもすてきな視点である。もちろん、世の中にはほんとうにやばい人もいる。でも事情がある人もいる。働けない事情に視点を置いたことはとてもいい。

 立ち尽くしていると言ってフミが見上げるのは松江城。武士の時代が終わったいま、お城だって立ち尽くして見える。

 トキは、父が化け物になって先生を食べる絵を描く。ささやかな「昨日の敵討ち」。

 これを見た司之介は化け物のマネをする。ガメラー? こぶら〜? なんて言って吠えているのか。

 それを勘右衛門がさやに入った刀で一刀両断。

 素朴で愉快な松野家の朝。

 松江の朝は、少しピンクの朝焼けが残って、幻想的だ。

 第1回の注目はしじみ汁。「しじみ汁は松江人の血液」ということでみんな大好きらしい。

 トキは飲んで染みて「はーーーっ」と嘆息。それを行儀悪いととがめられると小さく「はー」。かわいい。

 朝ドラはやっぱり初期の子役編がほっこりする。今回は料理もおいしそう。BKことNHK大阪放送局の消え物(食べ物)担当の料理指導として広里貴子の名前がクレジットされていたので安心だ。

 さらに日本画指導に、『スカーレット』(2019年度後期)の火鉢の絵付けと日本画指導などに携わり、大河ドラマ『光る君へ』(24年)の衣装デザインにも関わった諫山恵実が参加している。

 演出は『青天を衝け』(21年)、『どうする家康』(23年)の村橋直樹。

 俳優も芸達者が集まり、スタッフも盤石。期待値は高い。

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