
中学受験の過熱、大学入試の複雑化……塾や予備校の現場では、親の子への過干渉に警鐘が鳴らされることもしばしばだ。ところが、令和の時代に「過干渉」とは真逆の現象が散見されるようになったという。中学受験専門塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平氏が語る。
「とにかく子どもを全寮制に入れたい」
「向いてない」の言葉に憤慨する親
わたしの塾に入塾を問い合わせてきた母親と面談した際、こんな「希望」を打ち明けてきた。
「ウチの子は全寮制で考えています。6年間、そこでたくましく育ってくれれば……」
ところが、その母親はこの会話の直前に「ウチの子は繊細な性格で、傷つきやすい。結局もろいのですよね」と語っていた。
わたしは間髪入れず、こう返した。
「お子さんの繊細な性格を考えると、全寮制の学校は向かないですよ。寮生活は人間関係の密度が濃いですから、ある意味性格的に大雑把なタイプの子のほうが合っていると思うのです」
すると、その母親は機嫌を損ねたかのような口ぶりでこう言い募る。
「とにかく、うちの方針は全寮制の学校に行かせることなのです。最初からそう決めています」
どのような事情があって、全寮制の学校にわが子を託すのにこだわっているのかは分からない。しかし、わたしは母親のまとう雰囲気、口調から、「これはひょっとして……」と感じ、苦い思いが心の奥底から湧き上がってきたのだ。