月見バーガーが愛される4つの理由、毎年あるのになぜ飽きない?

 では、月見バーガーのような季節限定商品は、なぜこれほどまでにビジネスとして成功するのだろうか。消費者の心を惹きつける仕組みは、マーケティングの研究によって解き明かされている。

 2009年にデニス・A・ピッタとブランドン・G・シャーが発表した論文「The product strategy for seasonal products」(季節商品の製品戦略)は、この問いに明確な答えを与えてくれる。

  研究が示す第1の理由は、商品の販売終了が否定的に捉えられない点にある。

 季節商品は欠陥や不具合で廃止されるのではなく、単にシーズンが終わったから店頭から姿を消すと消費者に理解される。企業は、製品に問題があったのではないかという顧客の疑念を避け、ブランドの信頼を保つことができる。

 月見バーガーの場合、消費者は「秋が終われば販売も終わる」と自然に受け入れる。一般的なキャンペーンでは販売の早期終了は失敗と評価されるが、季節の移ろいの一部として認識されるのであれば、ダメージとならないわけだ。

 研究が挙げる第2の理由は、希少性と期待の巧みな管理にある。

 商品は終わることがわかっているため、消費者は今買わないと次は1年待たなければならないという心理的な圧力を受ける。論文では、もし消費者が店に行った時に商品が既に棚から消えていたら、次のシーズンに備えて特に注意するようになると指摘されている。

 この「買い逃し体験」は、次回の販売期間における購買意欲を強力に刺激する学習効果として機能する。月見バーガーの販売期間は毎年限られている。この時間的な制約が希少価値を生み出し、「今しか食べられない」という特別感を高める。

 買い逃した経験のある人は、翌年こそはと発売日を心待ちにするようになる。毎年繰り返されるこのサイクルは、ブランドへの愛着を深める効果も持つ。