回転寿司 勝者の条件#1Photo by Yuiki Okusa

回転寿司業界は大手5社による寡占化が進み、市場の成長性もかつての勢いを失いつつある。そんな中、業界3位のくら寿司は高級業態「無添蔵」に活路を見いだそうとしていることが分かった。回転寿司の高級業態は、市場の救世主となり得るのか。特集『回転寿司 勝者の条件』の#1では、くら寿司高級業態の可能性と今後の出店戦略を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 大日結貴)

誕生55年で岐路に立つ回転寿司
大手各社で進むリブランド戦略

 今や日本の外食産業を語る上で欠かせない回転寿司業態。寿司が回るというエンターテインメント性と、手頃な価格で寿司が食べられるとあって、急成長した業態の一つだ。

 その回転寿司業態は、外食業界内で二つに大別される。かつて100円均一寿司を提供していた「低価格回転寿司」と「グルメ系回転寿司」だ。

 低価格回転寿司は長年、かっぱ寿司とスシロー、くら寿司の3社がしのぎを削っていた。激しい首位争いの末にかっぱ寿司が売上高1位となり、2000年代に回転寿司王者に君臨した。ところが11年にスシローがかっぱ寿司を逆転して業界1位となり、それ以降、回転寿司業界のトップに立っている。

 そんなトップ3の一角に食い込もうとしたのが、25年3月期に外食企業として初めて売上高1兆円を突破したゼンショーホールディングス(HD)だった。02年に開業した「はま寿司」が急成長を遂げ、現在くら寿司を抜いて業界2位となった。そして15年に米卸売業大手の神明HD傘下となった元気寿司(現Genki Global Dining Concepts)が運営する「魚べい」が、売上高でかっぱ寿司に迫っており、大手5社となっている。

 一方でグルメ系回転寿司は「すし銚子丸」をはじめ、RDCグループが運営する「がってん寿司」、北海道を中心に展開する「根室花まる」などがある。各店舗には板前や経験を積んだ職人がおり、機械やロボットによって作られた寿司を提供する低価格回転寿司とは違い、単価は上がるものの、人の手によって握られた寿司を提供することで差別化している。

 そんな回転寿司業界に、新たな潮流が生まれている。低価格回転寿司の業態刷新(リブランディング)が始まっているのだ。その最たる例が、“回転しない”回転寿司の増加だ。今では大手で全店舗に回転レーンがあるのはくら寿司のみとなった。また、中価格帯や高価格帯のブランドを模索するところも増えてきた。

 そしてこの秋、大手回転寿司各社のリブランディングが、新たな局面を迎えようとしている。くら寿司の新業態「無添蔵」が出店を加速するのだ。くら寿司は、回転寿司市場の新たな鉱脈を発見したのだろうか。次ページでは候補地や出店数など、構想を解説する。