総予測2025#52Photo by Nami Shitamoto

2024年の外食産業は明暗が分かれた。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに飲み会離れが起こり、居酒屋形態は新型コロナ禍前の水準に戻り切らなかった。一方で、好調なのが回転寿司チェーンだ。インバウンド(訪日外国人観光客)を追い風に、国内だけでなく海外にも店舗を拡大する動きがある。特集『総予測2025』の本稿では、24年10月にスシローの新社長となった山本雅啓氏が国内と海外の出店戦略を明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)

猛暑でテークアウト業態を縮小
長期的には魚の養殖場所の変更も

――2024年9月期に過去最高益を記録しました。

 24年9月期の国内スシロー事業の売上収益が前年比15.7%増と大きく伸びました。海外スシロー事業は海洋処理水問題で上期にやや揺れがありましたが、予算変更を行いながら乗り切りました。

――猛暑の影響はありましたか。

 8~9月もスシロー事業の売上高は前年同期を上回っていて、客足も遠のきませんでした。ただ、テークアウト形態の京樽などは前年同期を下回りました。ここは不採算店を閉じるなどして黒字を確保しました。猛暑の影響という意味では、長期的にはネタの調達があります。

――どういうことでしょうか。

 海水温が上昇すると、今までの魚がいた場所や漁獲量が変わってしまう可能性があります。養殖でも同様です。しかも、養殖では、飼料の高騰もネックになります。原油高や温暖化で穀物の値段が上がると、イワシの値段が上がる。そうなると、イワシを餌として与える魚の養殖コストに跳ね返るのです。旬のネタを安定した価格で供給するために、養殖場所の変更も必要かもしれません。

――インバウンド(訪日外国人観光客)の効果は?

2024年のインバウンドは人数、消費額ともに過去最高の水準となった。インバウンドは日本食ブームの追い風にもなり、競合のくら寿司は米国で店舗数を拡大している。次のページでは、山本社長が国内と海外の出店戦略を明かす。国内ではインバウンドに対応し、出店戦略を変更。海外では中国でエリアの絞り込みを図る。スシローの次なる一手とは?