また、一般の勤労者の投資選択においても男女差がある、例えば年金プランの資産分配選択を比べると、独身女性は独身男性に比べて、明らかに安全資産への配分が高い(注3)。

 心理学研究によると、こうしたリスク選好の違いは、悪い結果を予想した時の不安や恐れの感情が男性よりも女性の方が強いからだという(注4)。

 投資を学んだ方には明らかであろうが、リスクと期待収益率の間には明確な関係がある。

 預金や国債といった安全な投資の期待収益率は低く、株式投資、不動産投資、ベンチャー企業への投資といったリスクの高い投資の期待収益率は高い。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の格言通りなのだ。

 女性のリスク回避度が高いということは、職業選択においても安定しているが大儲けも期待できない職業を女性は選択する傾向が強く、またビジネスにおける投資判断でも大失敗はしないが大儲けも期待できない選択を女性は選びがちだということを示唆する。それが結果として男女賃金格差に寄与している可能性があるのだ。

 ただし、平均の違いの話であり、男性にもリスク回避度が高い人がいれば、女性にも恐れず高いリスクを取る人が数多くいる。

 管理職の地位もしくは管理職になるトレーニングを受けた従業員を対象にした複数の研究では、男女でリスク選好に違いがないことが示されている。

注3 Sunden, Annika E.and Brian J.Surette(1998)“Gender Differences in the Allocation of Assets in Retirement Savings Plans”,American Economic Review 88‘(2):207-211.
注4 Harshman,R. A. and A. Paivio(1987)“Paradoxical’ Sex Differences in Self-Reported Imagery”,Canadian Journal of Psychology 41:287-302.