たとえば、電卓が一般に普及したとき、学校での使用をめぐって論争がありました。
要するに、「電卓を使うと、数学の能力が落ちるのではないか」といった懐疑論が生まれたのです。
しかし、いまとなっては「電卓を使ったせいで数学ができなくなった」という話を、私たちは耳にしません。
また、インターネットが登場した当初も、「あんなものはマニアのおもちゃでしかないから、すぐ廃れる」「紙の資料があれば十分」などと軽視する声が多かったものです。
しかし、いまでは、インターネットを活用しないビジネスは、ほぼ存在しないくらい不可欠なものになっています。
警戒心は学びを生まない
迷ったら、試す!の鉄則
生成AIのような新たなテクノロジーにも、同じことが言えるでしょう。
AIによる文章生成や画像生成の技術が急速に発展し、多くの人がその可能性に注目する一方で、「人々の創造性を損なうのでは?」「データ保護の信頼性は大丈夫?」といった懸念の声も上がっています。
こうした新技術に対する肯定と否定のせめぎ合いは、時代が変わるたびに必ず繰り返されるものです。
新しいテクノロジーに対して抵抗感が生まれる理由の1つは、「これまでのやり方へのこだわり」でしょう。
長年培ってきたスキルや経験が、新テクノロジーによって陳腐化するのではないかという恐れが、「変化を受け入れたくない」という感情につながってしまうのです。
もう1つの理由としては、「未知のものに対する警戒心」があります。
新しいツールや技術に慣れていない人のなかには、「いまのままで十分では?」という心理が生まれ、積極的に試そうという気持ちが湧きづらくなります。
また、そもそも新しいものを取り入れるには学習コストがかかるため、「いまさらゼロから覚えるのは面倒だな……」という感情が働くこともあるでしょう。
しかし、過去の事例が示すように、新しいテクノロジーはやがて当たり前のものになり、学びや仕事の方法そのものを大きく変えていくことがほとんどです。