戦争終結の8月15日
最後の特攻隊が出撃

 15日午後5時、宇垣中将の乗った中津留中隊長機を先頭に、最後の特攻隊が大分飛行場を離陸した。まだ、停戦命令はでていなかった。

「よし、やろう」

 鈴木大佐は決意した。その場に隊員を待たせ、すぐ司令部に帰って、重爆1機に爆装、出撃の準備をさせた。午後8時。鈴木大佐は軍司令官の部屋に行った。菅原中将は参謀長の川嶋虎之輔少将と協議をしていた。鈴木大佐は宇垣長官の出撃を報告し、すかさず、

『特攻基地 知覧』『特攻基地 知覧』(高木俊朗、角川新書)

「軍司令官閣下もご決心なさるべきかと思います。重爆1機、用意をいたしました。鈴木もおともをします」

 菅原中将は参謀長と顔を見合わせ、当惑した色を浮べた。ふたりは低い声で、しばらく語っていた。そのあとで、菅原中将はねちねちと、

「海軍がやったとしても、自分は、これからのあと始末が大事だと思う。死ぬばかりが責任をはたすことにならない。それよりは、あとの始末をよくしたいと思う」

 川嶋参謀長も同じ意見をのべた。鈴木大佐は、それ以上、強要しなかった。死ねる人ではない、と、あきらめてしまった。