1700万円貯めた独身会社員の悩み

 会社員のTさん(56)は独身で、母親(85)と二人暮らしです。自分が定年退職するまであと約10年。昨年は役職定年があり、収入が大きく減ったため、あまり貯められなくなってしまいましたが、これまでに約1700万円の貯蓄をつくりました。退職金制度がない会社に勤めているため、退職金を頼ることができず、懸命に貯蓄を頑張ってきたのです。

 しかし、ひとり身では老後に何が必要になるかわからないし、年老いた母の介護も気がかりです。さらなる貯蓄と資産形成が必要だと考えていました。そんなTさんが、老後資金の不安を解決したいと私のところに相談に来られたのです。

 お話を伺って、家計の状況から投資を始めた方が良いと判断し、NISAを活用した積立投資をお勧めしました。Tさんはすぐに投資について学び始め、自分で情報も集めながらクレジットカードからの積立投資でポイントを貯めたり、信託報酬(運用にかかる手数料)のわずかな差にも気を配ったりと、貪欲に、そして着実に資産形成を進めていきました。

「非課税世帯なのに給付金がもらえない」

 そんなある日、Tさんはふと、同居しているお母様のことに気が向きました。お母様の収入は国民年金と遺族年金のみで、住民税は非課税です。本来であれば、住民税非課税世帯向けの給付金などを受け取れるはずなのに、なぜかそれを受け取っていないというのです。

 以前、役所に尋ねたことがありましたが、「非課税世帯ではないから」と説明されたといいます。

「せっかくもらえる対象になりそうなお金があるのに、もったいない」と感じたTさんは、何に原因があるかを探り始めました。そして、解決の糸口が見つからないと、私に再度相談に来られました。

 お母様は、Tさんの「税金上の扶養」に入っており、Tさんは「老人扶養控除」という形で所得税の控除を受けています。一方、社会保障ではTさんの扶養に入っていましたが、お母様が75歳のときに後期高齢者医療制度に切り替わり、社会保険上の扶養からは外れたと認識されていました。