総予測2026Photo:Anadolu/gettyimages

ロシアによるウクライナ侵略は、5年目に突入しようとしている。戦争長期化とともに、欧州の戦争が次第に日本に近づいている。日本に近いロシア極東地域の空軍基地でも攻撃が行われ、ついに戦争の火の粉が東アジアにも及んだ。特集『総予測2026』の本稿では、どうすればこの戦争が終わりを迎えることができるのかを検証する。(防衛研究所研究幹事 兵頭慎治)

ロシアの核・ミサイルの脅威に
日本は直面する

 ロシアによるウクライナ侵略は、5年目に突入しようとしている。早期終結を掲げるトランプ政権の発足により、戦争終結に向けた期待感が高まったが、トランプ停戦の動きは不調に終わり、プーチン大統領も戦闘を止める様子がない。前線での領土をめぐる攻防に加え、ドローンやミサイルを用いた相互攻撃も強まっている。

 戦争長期化とともに、欧州の戦争が次第に日本に近づいている。2025年6月には、ウクライナがロシア領内にドローンを秘密裏に持ち込んで、ロシア軍の戦略爆撃機を破壊するという史上初の作戦が実行された。日本に近いロシア極東地域の空軍基地でも攻撃が行われ、ついに戦争の火の粉が東アジアにも及んだ。

 両国ともに国産の中距離ミサイルの開発・配備も進めており、ロシアの新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」がロシア極東地域に配備されれば、日本もその射程に入る。そうなれば、中国、北朝鮮に次いで、ロシアの核・ミサイルの脅威にも日本は直面することになる。

 また、ロシアと北朝鮮の同盟化の動きも加速している。25年4月には、北朝鮮兵約1万5000人の投入により、ウクライナ軍が逆侵攻したクルスクをロシア側が奪還することに成功した。実戦経験を備えた北朝鮮兵の戦闘能力と、実戦使用された北朝鮮製の砲弾やミサイルの命中精度が高まっている。韓国軍のトップは、25年10月に平壌の軍事パレードで初披露された新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星20」が、ロシアから技術支援を受けた可能性があると指摘した。ロシアに支えられる形で、北朝鮮の軍事能力が着実に向上している。

 さらに、24年末に英国メディアが、日韓の160カ所をミサイルで攻撃することを記したロシア軍の機密文書を報じた。そのリストには、82カ所の自衛隊の司令部や基地、関門トンネルや東海村原発などの民間インフラが含まれていた。ウクライナ戦争が欧州でエスカレートした場合、ロシア軍は東アジアでも軍事行動をとる想定である。

次ページでは、プーチン氏が停戦に応じることはない理由と、プーチン氏の真の戦争目的からして長期化は必至であることを解説する。その間、日本の安全保障にも影響を及ぼし続けることになる。