これは嘘のような本当の話なのか、リアルに見せかけたフィクションなのか。現代のSNSにおけるカオスな状況を、我々はいつの間にか当然のこととして受け取ってしまっていないか。ふと考えさせられるのが、このYouTuberの登場場面である。
視聴前後で変わる?
タイトル「俺ではない炎上」の意味
このほかの見どころは、予告でもインパクトのあるサクラ(芦田愛菜)の罵倒「あんたが諸悪の根源だからだろうが!」が一体どの場面で誰に向けて発せられるのか。そしてアイドルグループなにわ男子のメンバーである長尾謙杜の演技だろう。
そして、見る前と後とでは、「俺ではない炎上」というタイトルに感じるものが変わってくる。
視聴前は、濡れ衣を着せられて炎上に巻き込まれる山縣視点での「俺ではない」かと思っていた。しかし視聴後は、これはもしかして自分が当事者ではない炎上をどこか楽しむ気持ちで見守っている何万人もの人たちの視点なのではないか、という気もしてくる。
「自分ではない炎上」だから、エンタメとして消費してしまう現代人の姿を突きつけられたようにも思うのだ。
付け加えると、原作と映画では結末がやや異なる。筆者は原作の方が、周囲から孤立する山縣にとって救いがあると感じて好きだったが、映画の方が納得感があると思う人もいるだろう。映画を見て気になった人はぜひ原作と比べてみてほしい。
映画とは関係がないが、ちょうど10月中旬から体験型展示 「炎上展」 が東京・池袋で開催されるのだという。この告知ビジュアルがコンビニのアイスコーナーにダイブする女性のイラストなのだが、「実際にこれをやったのは男性なのに、女性にすり替えている」という批判が出ている。
また、コンビニのおでんを「ツンツン」したことで炎上した経験を持つ男性が、告知コピーの中に「つんつん」の文字があることに不快感を示したとも報道されている。
この2つは「『炎上展』がプチ炎上か?」と、またしてもネットユーザーのネタにされているが、このような展示が行われることも含めて、「炎上」が現代人にとって良くも悪くも興味関心の高い事象であることは間違いない。
庶民が火事見物に出かけて行った江戸時代から、他人の不幸をネタにしてしまうのは同じ。せめて拡散しない勇気を持ちたいものであると自戒する。SNS炎上は現代の病である。