「ホワイトハラスメント」が問題になっている理由

「今すぐ必要なのは、A課長と面談し、Bさんから退職届を預かっていることを伝えた上で、今までの指導内容を確認することです。ホワハラか否かの判断はそのあとにしましょう」

「わかった。Eさん、この件はまた後日連絡します」

 次の日、A課長はD部長から、Bが退職を申し出ていることとその理由を聞かされた。するとA課長は、自分の正当性を主張した。

「そりゃあ、B君のことは大切にしていますよ。会社の方針通り営業担当を付けず、先輩のフォローなどをさせていました。彼の場合は性格的におとなしいところがあるので、まだ1本立ちは無理かなと思います」

「君の考えはよくわかった。しかし、もう入社して1年を過ぎているからそこはきちっと指導してくれないとね。顧問社労士から君の言動はホワハラかも?と言われたよ」

 A課長は顔を真っ赤にしながら言い返した。

「じゃあ、B君が退職すれば、それは私のせいだってことですか?私は会社の方針を守り、彼のためを思って優しくしているのに冗談じゃない。じゃあ、明日からビシビシやりましょうか!」

「今度は『パワハラを受けた』と訴えられるかも……。それは困るね」

 翌日。D部長はE社労士に、A課長との面談内容を報告した。

「私は、A課長は彼なりにB君のことを考えていると思う。なのにどうしてホワハラなんて言われるようになったのかな?」

<ホワハラが問題になっている主な理由>
○ 2020年施行のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)により、企業はハラスメントの防止措置が義務化された。その影響で、パワハラに対して過剰に配慮する管理職が増えた。

○ 社員へのメンタルヘルス対策として、職場のストレス要因を減らすことが企業の責任になり、「仕事の負荷をかけないこと」に配慮した結果、若手社員を育成できない職場が増えたと考えられる。