25年度下半期における
注目業界は自動車と建設
日本の対アメリカ輸出額全体の約3割を占める自動車への分野別関税が9月16日に15%に決定したこと、および、経営再建中の日産自動車の動向などを背景に、当面は自動車業界に注目が集まるだろう。実際、帝国データバンク情報統括部には企業から取引先である自動車部品メーカーに対する懸念の声や信用照会が断続的に寄せられ、その回数は増えてきている印象だ。
これまで各自動車メーカーは輸出車両価格の引き下げを行うなどして分野別関税に対応してきたが、今後は生産・輸出車種の絞り込みや価格の引き下げ幅の縮小、価格引き下げを中止することなどで、その影響が中小部品メーカーへ受注単価引き下げなどの形で及ぶ可能性は否定できない。また、アメリカの対中国関税引き上げを受け、生産拠点を中国から国内生産に切り替えるなどコスト負担を強いられる中小部品メーカーが増加する可能性もある。
以上のことを踏まえて、2025年度下半期は、部品メーカーを中心とした「自動車関連業者」を筆頭に、物価高や人手不足の影響を大きく受け、2024年度上半期比で最も倒産増加率が高かった「建設業」の動向も注目されると予測する。
新政権で注目される
中小企業向け物価高対策
10月4日に自民党の新総裁に選出された高市早苗氏が今後、首相に指名されることになれば、新政権は経済対策として物価高対策に最優先で取りかかることが予想される。
物価高に伴い帝国データバンクでは2022年以降、全国の企業を対象に「価格転嫁調査」を計6回実施してきたが、直近の25年7月調査(全国1万626社が回答)では価格転嫁率は39.4%となり、調査開始以降最低の数値となった。これはコストが100円上昇しても39.4円しか販売価格に反映できず、残りの60.6円は自社で負担しているという深刻な状況を示す。
時間の経過とともに進むかにも思われた企業の価格転嫁だが、実際には、終わりが見えない原材料価格の高騰が続く中で、取引先との価格交渉に限界を感じたり、消費者離れやライバル社動向などを考慮し、転嫁したくてもできずに苦しむ事業者が増えている。新政権はこうした問題に苦しむ中小企業の課題をどう解消していくのか、転嫁率の変化とともに注目していきたい。