もしかしたら、僕がプレゼンした相手が、自分で発明したかのように社内プレゼンしたのかもしれません。そこは闇の中です。ただ実際問題、大企業にプレゼンしたらその後音沙汰がなく、気づいたら勝手に使われていた、ということはよくあります。

 もちろん、僕のプレゼンと関係なく、社内の人がたまたま同じことを思いついた、という可能性もゼロではありません。仮にたまたま別の人が思いついていたとしても、僕が先に特許を出願したからこそ、特許を取得できたわけです。これを先願主義(注1)といいます。

 このとき、僕にとって良かったのは、iPhoneの日本上陸時、僕の特許出願は未公開であったことでした。

 特許出願は、出願から1年半後に特許庁により公開(注2)されることになっており、それまでは特許出願されていることがわかりません。つまり、僕の出願は期せずして「サブマリン特許(注3)」となっており、Appleもソフトバンクも、この特許の存在に気づいていなかったということです。

 そして、iPhoneの日本上陸後に特許が取れた僕は、この特許をどう使うか、悩むことになります。

僕の特許とiPhoneの年表同書より転載 拡大画像表示

とんでもない「お宝」に
ドキドキだった日々

 とんでもない特許を持っている、という状態を想像してみてください。宝くじに当たった人の精神状態に近いかもしれません。

 iPhoneに続き、Androidにも、ウインドウズフォンにも、フリック入力が搭載されました。僕がこの特許権を行使すると、侵害品の差止め、つまり、全てのスマホの販売停止もできるのです。彼らからすれば、危険な特許といえるのです。

注1:先に出願した者が特許を取る権利を有する決まり。ちなみにアメリカは先発明主義なので、2人の人が同じ発明をした場合、先に発明した人が権利を得られます。しかし証明が難しいため、多くの国では先願主義となっています。
注2:特許庁のサイト(J-PlatPat)に公開されます。
注3:特許取得まで公開されない特許。