通帳を見て絶望する女性写真はイメージです Photo:PIXTA

多重債務者が急増、自殺者も増加」。年末に飛び込んだショッキングなニュースを機に、金融庁が「借金規制」の地ならしに動き出しました。しかし、かつてヤミ金業者や詐欺グループを取材した筆者は、「これで本当に救われるのか?」と疑問を呈します。規制強化の裏でほくそ笑むのは、実は彼らかもしれません。政治家や官僚が見落としている、データには表れない“多重債務者の恐るべきリアル”とは?。(ノンフィクションライター 窪田順生)

政治家も官僚も理解してない
「多重債務者の現実」

 2025年ももう終わりというタイミングで、世の中のムードが暗くなるようなニュースが飛び込んできた。

《【独自】多重債務者急増、147万人 金融庁調査、物価高影響か」》と共同通信が報じたのである。

 タイトルの通り、3件以上の業者から借り入れをしている「多重債務者」が急増しており、しかも多重債務が原因とされる自殺者も増えているというのだ。

《最近10年で最も少なかった2021年3月末の114万人に比べると3割近く増えた。多重債務が一因とされる自殺者も21年ごろから増加、24年は853人だった。金融庁は詳細な調査が必要と判断した》(共同通信12月6日)

 このようなニュースを聞くと「ああ、やっぱり物価高は深刻だから消費税減税なりで政府が低所得者を救済すべきだ」と思われる人も多いだろう。

 ただ、今から十数年前にもあった「多重債務者の社会問題化」をリアルタイムに取材して当時、金融庁からヒアリングも受けた立場から言わせていただくと、「借金に苦しむ人が増えています」系の報道というのは受け止めに注意が必要だ。規制を前に進めたいという政治的意図が多分に含まれ、世論を盛り上げるために「被害」を過大に盛る傾向があるからだ。