訴訟を起こしてライセンス契約をすれば、特許の存続する20年間にわたり、ライセンス料を受け取れるかもしれない。でも、特許を潰されたり、複数の裁判による兵糧攻めで借金まみれになるかもしれない。それならば、売って一括でもらった方がいいのでは?
どうでしょう。この状況。オール・オア・ナッシングか、現状もらえるものをもらうか。賞金制のクイズ番組の終盤みたいです。
悩みましたが、僕は、ライセンス料を得るより、特許を売る方が良いと判断しました。
自分のものになるかもしれないとなれば特許を潰しにくる可能性は低いですし、無視されずに交渉に応じてもらえる可能性も高いと考えたのです。
販売の方法としては、各社に希望の金額を入札してもらう、つまり、クローズドオークションにかけることにしました。
友人の弁護士と、勤めていた特許事務所の所長弁理士、東京工業大学のゼミの先生である弁理士、そして顧問をしてもらっている会計士2人、そして弁理士である僕の6人でチームを結成し、作戦を考えました。
「オークションをして
会社ごと売却」を選択
特許だけ売るのではなく会社ごと売却するというのは、会計士さんの発案です。特許を売ると利益の半分が税金で持っていかれてしまうのに対し、会社の売却益、つまり株式の売買利益の場合は2割程度の税金で済むのです。そのため、売却のためだけに新たに「パテントワークス」という会社を作りました。
Apple、Google、Microsoft、ソフトバンク、ドコモ、その他日本のメーカーも含め、10社ほどに、4人の弁護士と弁理士の連名で内容証明郵便を出し、いくら出せるかをクローズドで提示してもらい、一番高い値段をつけた会社に売ることにしました。
各社の対応はさまざまでした。Googleはガン無視。日本企業はダメ元なのか、外国企業よりは安めの金額を提示してきました。
Appleの代理人として最初に現れた日本人の弁理士はいかにもダーティーな戦いに慣れた印象で、にこやかな表情で僕にいくつかの特許文献を渡してきました。この先行文献を根拠に無効審判で潰せますよ、という脅しです。







