人生で一番もったいない“納得しないまま過ごす時間”の正体
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。

【精神科医が断言】人生で“最ももったいない時間”とは?Photo: Adobe Stock

周囲の「もったいない」という声

今日は、「本当にもったいないこととは何か」、そして、「人生にもったいないことは一つもない」ということについてお話ししたいと思います。

私には、10年間続けてきたクリニックをほかの人に事業承継という経験があります。そうすると、周りの人に「もったいない」と言われました。

多くの患者さんがしっかりとついてきてくださっていましたし、私はあまりコストをかけずに収益体制を確立するタイプなので、クリニックの経営収支は堅調でした。

しかし、このクリニックは様々な経緯があって始めたもので、必ずしも自分が心からやりたいと思って始めたわけではありませんでした。死別してしまったパートナーが準備していたものを引き受けたり、父が遺してくれた医療法人を継いだりと、いくつかのしがらみの中でスタートしたものだったのです。

本当にやりたかったこと

そのため、事業がうまくいっていても、心の底では「本を書きたい」「もっと情報を発信したい」といった思いがありました。また、できれば経営管理や人事といった雑務から離れ、診察だけに集中したいとも考えていました。

開業していると、様々なトラブルも、経営者として一手に引き受けなければなりません。しかし、これらは私が本当にやりたいことではありませんでした。そこで、「いつかはこのクリニックを譲ろう」と考えるようになり、幸いにも、しっかりと引き受けてくださる方が見つかり、納得のいく形で譲渡することができました。

現在は、自分が本当にやりたかった執筆活動をしたり、経営者の立場ではなく一人の医師として診察に集中できる時間を確保したりと、自分のペースで仕事ができています。

人生経験に「もったいない」はない

もし、この先また「自分のクリニックを開業したい」という気持ちになったとします。おそらく周りの人は、「それなら、前のクリニックを続けていればよかったじゃないか。もったいない」と言うでしょう。

しかし、一度手放し、また新たな気持ちで始めるのと、納得しないまま惰性で続けるのとでは、まったく意味が異なります。何が違うかと言えば、「自分の納得感」がまったく違うのです。

私が常日頃から提唱している「自分軸」で考えるなら、自分で納得して一度手放し、そしてまた始めたくなったのであれば、それは決して「もったいない」ことではありません。納得できないまま、ただ継続していた人生とは、得られる経験の質が全く異なるからです。

このように、人生経験という視点で見れば、「もったいない」ことなど一つもないのです。