IRに長年関わってきた筆者なりに考察していこう。まず、トヨタの株主優待制度について確認しよう。その内容は、保有株数と継続保有期間に応じて電子マネー「TOYOTA Wallet」の残高が付与されるほか、抽選でモータースポーツの観戦チケットなどが当たるという。

 2025年度は、1000株以上・5年以上でWallet進呈残高3万円、富士スピードウェイで開催される耐久レースや全日本スーパーフォーミュラ選手権などのペアチケットが総計3000人分用意されるなど、なかなか太っ腹だ。

 トヨタの足元の業績は好調で、ハイブリッド車を中心にトヨタ・レクサス両ブランドとも世界販売台数は伸びている。円安やトランプ関税の影響は減益要因となるものの、マネー誌では「競争優位な実力は揺るがないので、長期で保有して株主優待をもらうのに最適」などとイチオシしているほどだ。

 実は、同じ自動車業界ではホンダが株主優待の導入で先行している。カーシェア割引クーポン、抽選でレース観戦チケットや小型ジェット機HondaJetの遊覧飛行体験会など、なかなかバラエティに富んだ内容だ。

 つまり、ディーラーを介してとはいえ自動車メーカーと一般消費者との接点は非常に大きい。これらの企業の目指すところは、株価と商品の両面から応援してくれる企業のファンづくり=個人株主のロイヤルカスタマー化だ。

トヨタも機関投資家だけでは株価アップに限界

 冒頭に紹介したように日銀はETFの売却を進めているし、トヨタも機関投資家だけに頼っていては自社の株価を上げるにも限界がある。国内機関投資家の主な運用資金源である年金は、人口減少により、今以上に運用資金が純増することは考えにくい(もちろん、株高による評価増はあると思うが)。

 24年末時点で日本の上場企業の株式時価総額は、約996兆円。そのうち外国法人の割合は、31.8%にまで高まっている。1995年には約10%しかなかったのに。実のところ、海外機関投資家への偏りに抵抗感のある企業も多いものと思われる。

図表:株式時価総額の円グラフ
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図表:折れ線グラフ
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