料理研究家・管理栄養士の関口絢子さん料理研究家・管理栄養士の関口絢子さん Photo by Wataru Mukai

ビジネスパーソンが体の不調を未然に防ぐことに役立つ「予防メシ」を紹介する連載。「老化」と「血圧の上昇」と「体のコゲつき」の予防が期待される成分が含まれる旬の食材とレシピを教えてくれるのは、YouTubeチャンネル登録者数64万人をほこる料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんです。(文/関口絢子)

体調不良を予防して、仕事と私生活の土台をつくる「食材・レシピ」をご紹介する連載「予防メシ」連載をフォローすると新着記事がメールで届くので、読み逃しがなくなります。

糖化は「体のコゲ」
を防ぐ“3つのコツ”

 昼食後の会議で強い眠気に襲われる、夕方になると甘いものが無性に欲しくなる。多くのビジネスパーソンが経験するこの現象は、単なる「食べすぎ」ではなく、体を内側から老化させるサインかもしれません(※1)。その背景にあるのが、食後、血糖値が急上昇し、大量のインスリン分泌で急降下する「血糖値スパイク」です。(※2)。

 さらに深刻なのが、「糖化」と呼ばれる現象です。糖が体内で過剰になると、タンパク質と結合して「AGEs(最終糖化産物)」が作られます(※3)。これはいわば体のコゲつきで、肌ではシワやたるみを進め(※4)、血管では動脈硬化を促進します(※5)。

 パフォーマンスを維持し、長く働き続けるためには、この「血糖値スパイク」と「糖化」の連鎖を断ち切ることが重要です。

「高血糖状態になると、タンパク質と余分な糖が結びついて糖化が起きる」と一般的に解釈されますが、その反応からAGEs(最終糖化産物)になるまでにはいくつものプロセスがあります(※6)。皮膚老化(※7)や動脈硬化(※8)、関節炎(※9)など代表的ですが、全身の細胞や組織の劣化を引き起こすAGEsの弊害は、まさに体内に錆びついた物質が蓄積するようなイメージです(※6, ※8)。それを避けるためには、AGEsが作られるプロセスを理解することが大切です(※6)。

 糖化の初期段階の物質は不安定で分解されやすく、正しい食事や生活習慣で進行を防ぐことが可能です(※10, ※11)。その間に酸化や炎症など細胞や組織に負担のかかる様々な化学反応を重ねることで分解されにくい物質へと変わっていきます(※8)。

コツ 1:血糖値を「急上昇させない」食べ方を心がける

 食物繊維が多い食べ物やタンパク質、脂質は血糖値の上昇を緩やかにしやすいため(※12)、食事の内容が糖質に偏らないよう気をつけましょう。空腹時のジュースや甘い食べ物も血糖値の急上昇を招きやすくなります。逆に、酢の物やレモン汁(クエン酸、酢酸)には血糖値上昇を緩やかにする効果が示されています(特に酢)/レモン汁はそのような報告があります(※13)。

コツ2:AGEsの産生を抑制する抗酸化物質の摂取

 ビタミンC・E、カテキン、ポリフェノール:緑黄色野菜、果物、緑茶、コーヒーなどに豊富に含まれ、抗酸化作用でAGEsの産生を抑制に寄与する可能性が示されています。糖化を間接的に抑えることが示唆されています(※14)。

コツ3:AGEsを増やさない調理や食品を選ぶ

 焼く、揚げる、炒めるといった高温・乾燥調理ではAGEsの生成が増えやすくなります(※15)。生の状態は少ない傾向があり、蒸す、茹でる、煮るといった水を使った調理法は、通常の湿熱では100℃前後に保たれるため(※圧力調理は除く)、生成を抑えやすくなります(※15, ※16)。鶏肉の場合、焼いたもの(焼き鳥)は茹でたもの(水炊き)より条件により数倍(例:6〜10倍程度)、揚げたもの(唐揚げ)も数倍規模で高くなる報告があります(※15)。食品から吸収されるAGEsは一部で、約1割程度とする報告がありますが(※17)、小さな蓄積が大きな差になります。