第三に、地域金融の再生である。りそな銀行や大阪シティ信用金庫など地場金融が、地元企業の長期投資を支えられるよう制度的支援を整える必要がある。
第四に、大学・研究拠点の再構築だ。大阪大学・京都大学・理化学研究所関西センターを軸に、産学連携型のイノベーションサークルを形成することである。
名古屋が産学連携で成功したように、関西も知的インフラの再集中を急ぐべきである。もともと知的面で大阪には多くの強みがあり、研究所などを誘致すべく再開発を進めることは有効だ。
第五に、大阪都心の開発による「中央集権化」である。
上述したように大阪は都心機能を郊外に分散させることで、大阪そのものの活力が奪われてきた。オフィスや役所を再び都心に集中させることで、大阪の活力は取り戻せるはずだ。
第六に、東京と大阪を中心とする「都市連携」を作り、その中心となることである。
日本の財政は「都市対地方」の対立の面があるが、国政議員の数は地方のほうが圧倒的に多く、思い切った大都市の変革をするのは難しい状態にある。
そこで、東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡などの日本を代表する大都市が連携して、「都市開発」の財政を提案できる枠組みを作ることを薦めたい。
大阪として東京主導の枠組みでは乗りにくいが、大阪が中心となってリードできれば、都市開発に有利な政策が実現しやすくなる。
「東京の縮小コピー」ではなく
「名門産業都市・大阪」の復活を
大阪が副都心や副首都を目指す限り、それは常に東京の鏡像であり続ける。
これからの大阪は、「政治の首都」ではなく「産業の首都」を目指すべきだ。
そのためには、万博やIRよりも、製造・創薬・AI・ロボティクスといった持続型産業への長期投資に軸足を移す必要がある。
国の承認や補助金は最大限に利用すべきだが、それは地元企業・大学・自治体が連携して創る“地場の成長構造”を取り戻すことに費やすべきだろう。
名古屋は東京に対抗してこなかったが、地域の代表的な都市として発展を積み上げることに貢献した。
この名古屋の姿勢を下敷きに、大阪の独自構想を打ち立てられれば、大阪は再び「日本一の産業首都」に君臨する未来があると考える。
((評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司))