名古屋の強さは「東海における一極集中」を引き受けながら、行政が住みやすさを追求した点にある。

 行政の財政政策には大きく引き算(=行政改革)と足し算(=投資)があるが、維新は「引き算」をあまりに長く重視してきたために、「足し算」のほうの産業振興が疎かになっている印象がある。

 大阪はかつてバブル経済期前後に都心にあった企業本社を郊外に分散させることを奨励したが、それでは企業間の横のつながりが失われ、人材確保を難しくして、クリエイティビティを毀損(きそん)させかねない。

 大阪・関西万博は本来なら大阪都心でおこない、都心の再開発によって産業基盤を再び活性化すべきだったのであるが、結局、湾岸開発だけに利用されることになった。

 また、維新は「無駄の排除」に集中して、「住みやすさ」はむしろ毀損してきたように感じる。

 名古屋も減税を実施しており、行政サービスを低下させた部分はあるが、そのぶんをトヨタなど企業が補完して、なんとか「住みやすさ」を維持してきたのとは対照的である。

 大阪が、万博やIR(統合型リゾート)などの国策プロジェクトを実現して、大阪経済の拡大を図っていることは評価できるが、それを産業都市としての発展に結びつけようとしていない。

 これでは、一時的な景気刺激にはなっても、持続的成長にはつながらないだろう。

 大阪が取るべき道は、「国による補完」ではなく「産業の自立」である。政治ではなく経済で自らの存在感を示すことにある。

 大阪はこれからの発展のためにも、「疑似東京モデル」を手放し、「名古屋モデル」を基本に発展させた独自モデルを構築すべきである。

「大阪モデル」の構築に
必要な6つの施策

 名古屋の場合、トヨタという圧倒的な大企業があることが強みになっており、「名古屋モデル」をそのまま適用すればいいというわけではないだろう。

 ただし、基本的な戦略は名古屋から学ぶべきではないか。

 第一に、都構想の土台になる「府市統合」よりも「経済圏統合」を優先すべきである。

 大阪の特徴は、京都や奈良などの歴史的にも重要な都市、神戸や尼崎、東大阪などの産業都市をいくつも抱えていることにある。

 これらをネットワークでつなげれば、その潜在能力は名古屋を上回っている。大阪はそれらの企業・大学・交通を横につなぐ拠点となることが重要だ。

 第二に、企業の本社を大阪都心に誘致すること、特に地元にあった大企業の再帰還を促すことだろう。

 東京都心は地価が急騰しており、今は企業誘致の絶好の好機だ。また、大阪は多くの名門企業を生み出しており、大阪にルーツを持ちながら東京に本社を移した名門企業は多い。住友グループ、パナソニック、武田薬品、ダイハツなどを大阪に戻す政策こそが、真の成長戦略となりうる。

 獲得すべきなのは首都機能の一部ではなく、大阪で発展してきた大企業の本社機能だ。国に働きかけ、税制面の優遇などを働きかけるなどの努力をすべきだろう。