大阪が注目すべきは
東京ではなく名古屋
大阪が注目すべきは、東京ではなく名古屋である。
名古屋は東京以外の都市の中で唯一、安定した成長を続け、「大阪に肩を並べる産業都市」と見ることに異論は少ないのではないだろうか。
名古屋がそこに至るまでには「名古屋モデル」と呼ぶべき独自の戦略があった。
名古屋は大阪ほど「地方分権」にこだわらず、東海地区の中心都市として機能してきた。
名古屋において注目すべきは、産業を核にした自律的経済圏を築いた点にある。トヨタ、デンソー、アイシン、ブラザーといった製造業の集積が、研究開発から生産、輸出までを地域内で完結させる「垂直統合圏」を形成している。
行政はこの産業構造を支えてきたが、主導はあくまで民間である。その結果、政治の浮き沈みに影響されない強靱(きょうじん)な都市経済を持つに至った。
さらに重要なのは、名古屋が控えめな都市文化を保っている点だ。
東京に対抗するのでもなく、大阪のように政治運動を仕掛けるのでもない。むしろ、減税や環境整備など住民に利益のある「住みやすさ」にこだわった行政運営をおこなってきた。
トヨタを頂点とする産業連携ネットワークは、国家よりも自治体よりも安定した「経済の共同体」として機能している。これこそが、名古屋が順調に成長を続けられる最大の理由ではないだろうか。
大阪府と愛知県の
GDPはほぼ同水準
名古屋の強さは、行政主導ではなく民間主導で産業構造の自律性を作ろうとした点にある。トヨタを中心に、部品・機械・電子部品・物流までが地域に根を張り、金融もまた地場の銀行が支える。
「東京の金」「大阪の人」「名古屋のモノ」という古い言葉があるが、名古屋は今も「モノの都市」である。
大阪が「都構想」に奔走しているあいだ、名古屋は地元企業の発展を側面支援して、国の制度に頼らず、地元企業の再投資と技術革新で自らを支えた。そこで行われた住民サービスの充実が、それらの企業の人員確保に貢献してきた。
その結果、名古屋自体は大阪に追いついていないが、大阪府と愛知県のGDPはほぼ同水準にある。
https://www.pref.osaka.lg.jp/o040090/toukei/gdp/index.html
https://www.pref.aichi.jp/press-release/toukei20250131-2022kenminkeizai.html