そのため、国はこれまでのように「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という負担と給付の関係を見直して、「全世代対応型の社会保障」への転換を目指している。後期高齢者医療制度の窓口負担の見直しもその一つで、75歳以上でも一定以上の所得がある人には相応の負担を求めることになったのだ。

引き上げの対象は310万人
負担増は年間どのくらいになる?

 前述のように、後期高齢者医療制度の窓口負担は原則的に1割で、課税所得145万円以上(年収は単身世帯383万円以上、複数世帯で520万円以上)で現役並みの所得のある人は3割負担となっていた。

 この他に、所得が一定以上で次の2つの条件を満たした人は、2022年10月から自己負担額が1割から2割に引き上げられることになった。

1 世帯内の75歳以上の人の中で課税所得28万円以上の人が1人でもいること
2 年金収入と、その他の合計所得金額が、単身世帯は200万円以上、複数世帯は320万円以上

 例えば、夫婦2人世帯で、夫の課税所得が28万円で、夫婦の年金収入の合計が320万円以上になると、医療費の自己負担割合が夫婦とも2割になる。

 ただし、経過措置として、22年10月~25年9月は外来(通院)での窓口負担の増加額は最大でも月額3000円までに抑えられていた。

 例えば、1カ月当たりの医療費が5万円の場合、自己負担割合が1割から2割になると、本来なら窓口負担は5000円から1万円になる。だが、負担増は最大で3000円に抑えられていたので、医療費が5万円かかっても患者負担は8000円で済んでいた。

 ところが、25年10月からはこの配慮措置がなくなるため、医療費が5万円だった場合は窓口負担額が1万円となり、これまでよりも2000円負担が多くなるというわけだ。

 しかし、75歳以上の人がすべて2割負担になるわけではない。厚生労働省では、この経過措置終了の影響を受けるのは310万人で、年間の医療費の負担増は平均で9000円、中央値で6500円になると試算している。