続いて、C919とエアバスA320やボーイング737を比較してみよう。COMACのエンジンはエアバス、ボーイングと同一のもの。航続距離が短いだけで、他の仕様はほぼ同じである。

つまり、ナローボディ機での実力は、エアバスやボーイングとほぼ互角といっても過言ではない。そして、冒頭の表にある開発中のワイドボディ機「C929」こそ、エアバスA330やボーイング787といった中長距離路線にガチンコで参入する本丸機種である。これが成功すれば、将来的にはエアバスA350やボーイング777Xのような400席以上の超長距離機を開発しても不思議ではないだろう。
エアバスやボーイングも未達成
世界初の偉業を遂げる可能性
ここで注目すべきは、エアバスやボーイングでさえ100席以上の航空機しか製造していないことだ。一方、COMACが短距離から長距離まで、異なるクラスの航空機を一気通貫で生産する体制を構築できれば、世界初の偉業となる。
さて、日本人からすると、「スペックは分かったけれど、そもそも中国産の飛行機って信頼できるの?」といった素朴な疑問が浮かぶだろう。その答えを言うと、実は今、中国以外のエアラインへの納入が増えている。
まず、ベトナム最大のLCCベトジェットエアでは、中国の成都航空から乗務員やメンテナンスなどを含むウェットリースという形でC909を使用している。他に、インドネシアのトランスヌサ、ラオスのラオ・エアラインズが導入済み。3社とも、エアバスA320と併用で使っており、C909が国際的な商用飛行に耐えうる機体であることを証明している。これがCOMACの世界市場への第一歩となっている。


LCC最大手が導入すれば
「世界第3位メーカー」に現実味
C909とC919が中国外で飛行可能となるためには、欧州航空安全機関(EASA)などの国際認証が不可欠だ。そのような中、欧州最大のLCCライアンエアーが、「C919がEASAの認証を取得すれば発注を検討する」という方針を示したのは、航空業界では極めて重要な出来事だ。
ライアンエアーは200以上の都市に就航し、現在はボーイング737シリーズを中心に500近い機材を使用している。格安運賃を提供するために、徹底的なコスト管理で知られるLCCだ。当然ながら機材選定にも厳しい基準を持っている。そんなライアンエアーが注目するということは、C919が国際的な安全基準と経済性の両面で高いポテンシャルを秘めていることを示唆している。
今後、C919がEASA認証を取得し、ライアンエアーが発注に踏み切れば、COMACにとって非常に大きな転機となる。それは、エアバスとボーイングが牛耳る航空機業界に、大きな一石を投じることなる。