このようにCOMACは、中国国内専用機と見なされていた時期を乗り越えつつある。この先、長距離ワイドボディ機のC929が商用飛行を開始し、EASAや米国連邦航空局(FAA)の認証を取得すれば、“飛行機のBYD”になる日も現実味を帯びてくる。それは、意外とあっという間かもしれない。

 ボーイングやエアバスでも手付かずの100席以下のリージョナル機は、かつてカナダのボンバルディアが製造していたが、経営不振で三菱重工業に事業ごと売却した(注:三菱スペースジェットの開発製造とは全く別案件)。ロシアではスホーイやイルクートが挑戦したが、国内飛行にとどまっている。結果的に今このクラスの航空機は、ブラジルのエンブラエルの牙城であり、エンブラエルは世界第3位の旅客機メーカーだ。

 人民網のニュースを参照すると、中国でのCOMACの立ち位置が分かる。「C919の成功を中国の自主的な研究開発における大きな飛躍と捉え、〈中国製造〉から〈中国智造〉(中国の知恵による製造)への転換を象徴しています」(筆者訳)と表現している。日本でも三菱スペースジェットに多大な期待が寄せられたように、中国でもCOMACが製造業の枠を超えた、国のメンツをかけた期待を背負っていることがうかがえる。

何とも「中国らしい」事象...
大きさ・形ともエアバスに酷似

 ただし、「何とも中国らしい事象で興味深い」点を最後に記しておこう。C919の大きさはA320、形はA220に酷似しているのだ。2008年からエアバスは天津で、主に中国向けの機体を製造している。この点、C919は、中国での製造をかたくなに拒んできたボーイング機に似ていないのを踏まえると、実に興味深い。

機体外観がそっくりなC919(左)とエアバスA220(右)機体外観がそっくりなC919(左)とエアバスA220(右)【撮影:そらオヤジ組(左)、筆者(右)】
特に機首部で似ているC919(左)とエアバスA220特に機首部で似ているC919(左)とエアバスA220(右)【撮影:そらオヤジ組(左)、筆者(右)】

 COMACは、エンブラエルを超えて世界第3位メーカーになれるか。業界ニュースでは早くも、「航空機のABC」(エアバス、ボーイング、COMACの頭文字)という表現も出ている。11月には国際航空見本市である「ドバイ・エアショー」が開催されるので、この場でも話題になることだろう。

 筆者はCOMACに肩入れするわけでは全くないのだが、エアバスとボーイングが牛耳るこの業界に風穴が開き、新しい風が吹き込むこと自体には肯定的だ。いずれにしても、今後の動向に目が離せないことだけは確かだろう。

パリエアショーでのCOMAC展示ブースの様子パリエアショーでのCOMAC展示ブースの様子(撮影:筆者)