
「よかったー錦織さんだけかと思った」
錦織と庄田を見送ると、帝大生のふたりは学校に出かけていく。
またふたりきりになれたトキと銀二郎だったが、彼も働きにでないといけない。行きがけに「あの」と言いかけて、何を言うのかと思ったら、錦織のこと。
「でももうずっといっしょだと思います」の件はどうなっているのだろう。
家が貧しく下等小学校しか出ておらず、体も弱く、中学中退しているため、今回中学校教師の資格の検定試験を受けるのだ。クールに振る舞っているけれど錦織も苦労しているようだ。
トキは出かけに「これを」と銀二郎にも包みを渡す。それまでは後ろ手に隠していたのだ。
「よかったー錦織さんだけかと思った」と体を前かがみにしてほっとしたように、銀二郎は全身で喜びを表現。
「そげな」「夫婦なんですから」と笑うトキ。
こういうやりとりが初々しい。怪談や、ややシュールなコントなど、王道から少しズレている印象があるので、こういうベタなやりとりにホッとする。
笑顔がいい寛一郎。まじでうれしそうに見える。少し影のある憂い顔なので笑ったときのギャップ萌えという感じである。
だが見送ったトキの顔がすーっと変わる。笑顔がなくなったのが気にかかる。
その頃、松江。勘右衛門(小日向文世)が、銀二郎が東京に行き、トキも東京に行ってもう戻ってこないことを雨清水家に報告に来ていた。
「みんな出ていっちゃうわねえ」とタエ(北川景子)と言っている当人がこの屋敷を出ることに決めて、すでに背後で業者が引っ越し作業をしている。
勘右衛門が男子を望んでいたにもかかわらずトキを養子にもらったとき、「おじょ」と抱いて微笑んだことをタエは思い出す。このときの小日向文世の笑顔が最高。
子どもを手放す親の気持ちを、タエも勘右衛門も共有している。つまり、子どもの幸せを願うということ。子どもはいつか旅立っていくものなのだ。
再び東京。トキは東京をブラブラ歩き、迷子になっていた。
見知らぬ洋装の男性に手を取られ、「東京だ」と実感。アイスクリンをごちそうすると誘われて困っているところに、「おトキちゃん、乗って」と助けに入ったのは――。