また、京都府以西の近畿、中国、四国、九州といった西日本が、東日本よりも医療費が高くなるという明確な傾向性を確認できます。これを冬型の気圧配置になぞらえて、医療費の「西高東低」現象と呼びます。

 医療費は高齢者の方が高くなりますから、高齢者が多い少ないで地域差が出るのでは、と思われた方もいるでしょう。もちろん、地域によって高齢者の割合は異なり、高齢者の割合の大小も医療費格差の要因の1つになります。しかし、高齢者が西日本に過度に集中しているわけではありませんし、高齢者割合の大小はあまり重要な要因ではありません。

医療費の財源の9割を
医療保険料と税金が賄う

 このことを確認するために、75歳以上の後期高齢者に限定して同じように都道府県の医療費格差を見てみましょう。

 図2-2は75歳以上の後期高齢者の1人当たり医療費の地域格差を見たものです。

図2-2同書より転載 拡大画像表示

 この図から、むしろ後期高齢者の個人ではさらに大きな医療費格差が存在し、より明確な西高東低現象を確認できます。なぜこのような医療費の地域格差が生じるのでしょうか?

 医療費が異なるということは、病気のなりやすさが住む地域によって異なるのでしょうか?あるいは、提供される医療が、同じ病気であっても住む地域によって異なるのでしょうか?そのように考えると、医療費の西高東低という地域格差は、とても不思議な現象であるように思えてきます。

 ここで、医療費の地域格差をもたらす真犯人を突き止めることが、とてもだいじであることも強調しておきたいと思います。

 医療費の財源は、医療保険料と税金で約9割を占めています。また、医療保険は個々の保険者で運用されていて、たとえば広島県の医療費を広島県民の保険料と税金で賄うといったしくみにはなっていません。このため、医療費の高い地域の医療に、医療費の低い地域に居住している方々の保険料や税金が使われているのです。とても不公平なしくみだと思いませんか?