したがって、公平な医療を実現するためには、医療費の格差を是正していく必要があり、そのためにも地域格差の犯人を突き止める必要があるのです。

効率的な医療の実現に向けた
大きなヒントが隠されている

 あらためて図2-1のグラフを見てください。ここで、もし全国平均以上の地域が、仮に全国平均並みの医療費37.4万円にまで節約できたら、日本全体で医療費はいくら削減できるかを考えてみます。

 単純に全国平均以上の都道府県の1人当たり医療費と全国平均37.7万円の差額分を、各都道府県の人口で掛けて積算していくと、約2兆円の節約になります。この2兆円という金額で何ができるかも考えてみます。

 約2兆円という金額は、消費税収の約10%に相当しますので、消費税率を約1%軽減できるかもしれません。また、2022年度の少子化対策費の合計は約3.2兆円ですから、2兆円もあれば、保育所の整備、児童手当、教育費の補助などを、現状よりもかなり拡充できることになります。

 果たして、高医療費地域において全国平均並みの医療費に節約することが、どれほど大変なことなのでしょうか?日本の約半分の地域では、全国平均以下の医療費で普通の生活をしていることを考えると、少しのがまんですむようにも思えます。

 しかし、全国平均以下の医療費の地域では、医療不足により健康被害が多発しているのかもしれません。すると、医療費の高い地域で安易に医療費を節約すれば、国民の健康水準を大きく低下させてしまう危険もあります。

 ただし、医療費の節約によって健康水準が悪化しないならば、この医療費の地域格差には、効率的な医療の実現に向け大きなヒントが隠されていることになります。医療費の地域格差がどのような理由によって生じているのか、そして、その結果、地域の健康水準にどのような影響を与えているのか。このことを見きわめることは、日本の医療のこれからを考えるうえでとても大切なのです。

病床数が最も多い高知県は
最も少ない神奈川県の約3倍

 では、医療費の地域格差をもたらす要因を考えていきましょう。

 医療費格差をもたらす犯人として最もよく指摘されているのが、病院数や病床数、あるいは医師数といった医療資源です。医療資源が充実している地域とそうではない地域で、どうして医療費が異なるのでしょうか?

 このことは、ある意味で当然のことかもしれません。