仕事をサボっているのか
発達特性が原因なのかわからない

 またある時は、取引先の担当者の「今度飲みに行きましょう」という言葉を真に受け、「今度」とは今日なのか明日なのかと会うたびに執拗に尋ねるため、担当者から苦情がきたこともあります。

 1週間の欠勤以降は、ますますそうした傾向が強くなり、大小さまざまなクレームが増え、成果物も出せないような状態にまでなっています。

 顔色も悪く、とても疲れた様子です。以前から会議中の居眠りはよくありましたが、最近ではデスクで突っ伏していることも多いため、「一度病院で診てもらったら」と声をかけましたが、「自分は大丈夫だ」の一点張りです。

 Mさんの言動を見ていると、メンタルヘルス不調や発達特性による可能性もあるのではないか、などと思うのですがよくわかりません。

 Mさんが仕事をしやすく、周囲も困らないように何らかのマネジメントの工夫をするべきなのかと考えるのですが、Mさん自身が特別な配慮を拒否したり、配慮をすることで彼を傷つけてしまうのではないかという心配もあります。

 また、本当に支援が必要なのか、それとも個人の性格、あるいは業務の経験不足ととらえるべきなのか、よくわかりません。どのように対応すべきなのでしょうか。

なぜ問題が起きたのか
部下の立場になって考える

 まずは、これらの職場の困りごとの背景にあるMさんの認知機能の特徴(脳の働き方)の可能性について考えてみましょう。

 Mさんは、仕事の手順ややり方にこだわりがあり、状況やニーズに合わせてそれを変えることができないという行動の特徴がある可能性があります。

 誰しも、うまの合わない人がいたり、業務上のミスが生じることはありますが、異動前から同じ問題が継続している可能性が高いことや、何度注意をしても改善がなされないことからも、本人の認知機能の特徴と環境とのミスマッチが繰り返されている可能性が考えられます。

 しかし、Mさん自身は、自分の業務のやり方を「必要なやり方である、ごく当然の正しいやり方をしている」と思っていて、同じやり方をしない周囲やそのやり方を受け入れない上司に対しての不信感や怒りが膨張している様子です。