「街の豆腐店や中小の豆腐メーカーは製造コストに耐えられず、赤字を抱えたまま倒産や廃業。帝国データバンクの調査によると、2023年に46件、2024年は1~7月だけで36件が倒産・休廃業・解散しており、過去最多のペースで推移しています。当社の平均売価は116円(※2)なので、市場平均より25円ほど高い金額で売っていますが、それでも苦戦している状況です」
(※2)…出典:IntageSCI(23.8~24.7)
2025年は物価高騰による買い控えが加速。価格転嫁できなかった企業の倒産・廃業件数はさらに増える可能性が高いと、池田氏は危機感を募らせる。
赤字でも値上げできない
切実すぎる現実
このまま“安さ”を競っていては、市場の縮小は止められない。それでは、豆腐が店頭に並ぶまでにかかるコストを考慮した「適正価格」はいくらなのだろうか。
「大豆の仕入れ値や人件費など、各メーカーの事情によって異なるので一概には言えません。ただ、農林水産省が実施した『適正な価格形成に関する協議会(※3)』で行われた調査では、コストに見合った利益を豆腐の製造事業者が得られる価格は103.4円、国産大豆を使用した場合は132円という結果が出ました。先述の平均売価は輸入大豆の商品も含まれていますが、それでも数十円の赤字。平均よりも安く売っている豆腐メーカーの損失は、さらに大きいでしょうね」
(※3)…農産物や食品の市場における適正な価格形成を実現し、生産者、加工・流通事業者、小売事業者、消費者などからなる持続可能な食料システムの構築を目指す協議会
この協議会では、豆腐だけでなく、納豆、米、牛乳、卵などの適正価格を検討している。多くの農産物や食品が、コストと販売価格のはざまで苦しんでいるのが実情だ。
「政府も日本の一次産業の危機と捉え、さまざまな施策を打ち出しています。2025年3月には、農林水産省が進めている『フェアプライスプロジェクト』の一環として『値段のないスーパーマーケット』を期間限定で開催しました。来場者自ら“適正と思う価格”を商品に値付けして会計をすると、店頭で売られている価格がわかる体験型のイベントです。その商品を購入するわけではありませんが、消費者の皆さんが一次産業の課題を知るきっかけになったようです」







