「値段のないスーパーマーケット」は、Webでも公開されている。実際に挑戦してみると、消費者と生産者にとって“フェアな価格”をつける難しさを体感できるかもしれない。
「私自身も、豆腐市場の課題を解決するには“消費者の価値観”を変える必要があると考えています。もちろん、消費者の皆さんも物価高で困っているので、すべてを適正価格にするのは難しい。そこでアサヒコでは、豆腐に新たな価値を提案するという方法を模索しています。たとえば、当社の『豆腐バー』は豆腐を棒状に固めて、手軽に植物性タンパク質が効率的に摂れる商品です。それまで“なめらかさ”や“のどごし”が重視されてきた豆腐をあえて硬くして、新たな価値を創出しました」
2020年に発売された「豆腐バー」は、累計9600万本(2025年9月末)を突破する大ヒット商品に。池田氏がアメリカのスーパーマーケットの視察に行った際に出合った「TOFU」から着想を得て開発されたという。
「アメリカでは、硬いTOFUをステーキにしたり、油で揚げたりして食べているそうです。日本における豆腐は伝統食ですが、アメリカではヘルシーなタンパク源。その違いをヒントに『豆腐バー』を発案しました。その後、他社からも類似商品が登場し、新たな市場が生まれています。一企業としては競争が生まれる大変さがありますが、業界全体で見れば良い流れを感じています」
職人の名前を刻む
「クラフト豆腐」の挑戦
アサヒコでは現在、豆腐の“復権”を目指して「クラフト豆腐プロジェクト」を進めている。その第一弾として、大豆の産地・品種にこだわり、工場の職人一人ひとりの技を生かした「職人(クラフト)豆腐」シリーズを発売した。
「クラフト豆腐は、高い技術を持つ当社の職人たちの“技”を駆使して作られた豆腐です。一般的な豆腐は、温かい豆乳を一度冷やしてから固める『冷凝固』という方法で作られますが、クラフト豆腐はしぼりたての温かい豆乳を瞬時に固める『温凝固』という製法を採用しています。大豆の風味やおいしさが引き立ちますが、難易度が高い製法なので、職人たちの熟練した技術は欠かせません」







