「ほら。さっきは他と同じって言ってたけど、違うところがありますよね」と言うと、「そういえば、そうだね~」と返ってきた。本人は自覚していないのだ。

 ただ、他にもまだ秘訣がありそうなので、もう少し粘ってみた。すると今度は、その牧場の牛は他と比べて、足腰が非常に強いことがわかったのだ。

 その牧場では、牛が生まれてからある程度大きくなるまでは、別の育成用の牧場に預けるそうだ。育成用の牧場は山の斜面にあるため、牛は足を踏ん張って上り下りする。その影響で足腰が鍛えられて、健康状態も良くなって牛乳の美味しさにつながっているということだった。

 ここまで工夫を重ねていて、さらに低温殺菌製法で作っているわけなので、普通の牛乳と同じであるはずがない。それで「なぜこの牛乳は美味しいのか?」ということを前述のリーズンUSPとして説明して販売してみた。すると、たちまち私の会社のECサイトで評判になった。

 これらの特徴は、牧場主のフリートークではまず語ってもらえなかった内容だ。なにせ、もともとは「他の牧場とそんなにやっていることは変わらないと思うけどね」と言っていたくらいなのだから。私があれこれ聞いてみて初めて、「ああ、確かにそれは他ではやっていないかも」という感じで見えてきた価値だった。